花蓮で「手揉みで作る蜜香紅茶製茶ツアー」を開催しました(其の2)

結構時間が経ちましたが、まだ茶園にいます(笑)。
茶農家の高さんは、10分くらい体験すれば十分でしょ?と言っていましたが、念願の茶摘みですから、皆さん飽きません。かなり奥まで摘みに行っています。

和達たち素人は、歩きながらもっと積みやすいところはないかと奥へ奥へと行ってしまいますが、プロの摘み手は違います。10人くらいでチームを組んで

畝を挟むように、みんなで一緒に掃除機のように畝を端から端まで積みながら移動します。

一以庵

茶農家にとって、茶畑はまさに”飯のタネ”。大事な収入源である茶畑に入らせてくれて、それだけでも感謝なのですが、高さんはどこまでも実におおらかで「楽しそうだからもう少しほうっておいてあげようか」と言いつつ、そばにいた私に茶園の生態や茶葉の育成、着涎(虫害、ここでは良いことです)などについて教えてくださいました。

一以庵

茶摘みレディーの一人が、人懐こく話しかけてきて、指につけていた刃物を見せてくれました。

「とても鋭いから気をつけてね」

指ぬきにパンマーシャークのように刃が。しかも、厚みもあって結構な刃物ですよ。この切れ味で、茶摘みも楽になり、スピードアップできるのでしょう。
茶摘みレディーたちのファッションは、全身をすっぽり長袖長ズボンで包み、さらに菅野傘に車のフロントガラスにつかうサンシェードをクリップでつけての完全武装。日差しがとても強いので、逆に服を着た方が涼しいそうです。赤やオレンジで女性らしさもバッチリ。遠くにいてもすぐわかるし、おしゃれですよね。MP3を腰に下げて音楽を聴きながらも手は素早く茶葉を摘んで行きます。

一以庵

製茶場に戻り、別に用意してあった茶青(生葉)で揉みを開始します。きちんと手で一心二葉に摘まれた茶葉。高さんは、この製茶体験のために前日から茶青を用意してくれていました。

摘み取ってから15時間ほど萎凋(萎れ)させてからでないと、茶葉にハリがありすぎて均一に細胞の揉み壊しができないからです。

一以庵

前日からの十分な萎凋でいい具合にシナっとした茶青を、竹籠の上で両手で揉んで行きます。コツは、両手の平を下にしてドーム状にし、その中で茶青をゆるい塊状にし、圧力を均一にかけながら塊ごと転がす感じです。竹籠に消しゴムのように擦りつけるのではなく、一枚一枚の葉が捻れを生じるように均一に力を加えます。茶葉が固まったら、揉むのをやめてほぐします。ダマを均一にほぐしたら、再度手の平ドームの中で転がしながら揉みます。これを、2時間半!中腰で揉むので結構腰にきますが、日本人は真面目。黙々と揉んでいます。

一以庵

経験豊富な高さんは「今自分が揉んでるお茶は自分のお茶になるからね。他と混ぜないからね」とゆるくハッパをかけてくれます。俄然、またみんな頑張り始めます(笑)。
「明日の朝コンテストやるからね」
この一言で、ノリの良い関西女子達は、生き返ったようにマイティーを揉み続けました。

一以庵

「差不多了!(そろそろいいかな)」

のお声がかかるころには、みんなの手は滲み出た葉汁で茶色く染まっています。なんかすでに紅茶っぽい。手の平を嗅ぐと良い香りが。でも、スマホや白い服は触れません。洗っちゃう前に記念撮影。

一以庵

これから、湿った布を被せて数時間放置し、茶葉を発酵(茶葉の酵素の酸化)させます。紅茶なので、全発酵を目指します。
紅茶は、先に揉んでから発酵させることであっという間に全発酵が完了します。これが烏龍茶だと、摘んできた茶青に静置・攪拌(萎凋・発酵)を繰り返し行い、翌日午前中にやっと殺青となるので、完成まで丸二日間くらいかかってしまいます。
紅茶なら、気温や湿度にもよりますが、午後4時くらいに揉みを終えてから発酵、乾燥を終えて翌早朝には余裕で出来上がっています。紅茶は、製茶がスピーディーで体験にはもってこいなのです。

一以庵

(次回に続く)

一以庵

Hondo Yasuko

台北暮らしは1996年から。中国茶は2000年より。現在は台北の中山と天母にて中国茶教室を主宰するとともに、鎌倉と大阪で茶会やレッスンも行っています。日本語、英語でのレッスンが可能です。

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